第25回東京柏葉会 卒業生・講演会 講演内容

2015年7月5日(日)

「ホテル椿山荘東京」オリオンの間U

 

講演テーマ 

「豊かな時代のガーデニング生活」

講演者 15回生 宮内 伶

(みやうち さとし)

司 会  15回生 杉崎 美保子

 

高い所から、謹んでご挨拶申しあげます。

空席を除いた、満場の皆様、こんにちは!

 

 ご紹介いただきました通り、昭和42年に園芸学科を卒業、永らく広域緑化・造園工事に携わってきました。平成2年にバブル経済が弾け、即刻、建設工事業から身を引き、船井総合研究所と共に列島を駆け回る、園芸関連の経営コンサルタント業務に転身、今日に至っております。

 

「柏の緑、風香り・・・・・」南高校歌のカシワノキ。

同窓会  どれが生徒か  教師やら !

マドンナも  よいしょ と座る  柏葉会  !

 

カシワ(柏)= 英語では Japanese Emperor Oak  

ブナ科の落葉樹(冬でも枯葉が落ちないで翌春まで樹上に残る。 枯れた葉が長く枝に残るので、昔から「代が途切れない」縁起物とされてきました。塩漬けにして、端午の節句に柏餅を包むのに用いられます。「柏手を打つ」というように神事と深い関わりをもち慶事・神事に使われ、庭園にも植えられてきた。)そんなことから、南高校歌に織り込まれたのでしょう。

 

本席に2月19日、または9月27日生まれの方、いらっしゃいますか?

カシワはこの両日の誕生花で、花言葉は勇敢、歓待、独立、愛は永遠に、愛想のよさ、自由などとされます。

名古屋市以西では鶏肉のことを「カシワ」と呼ぶ事があるが、これは地鶏の羽色が柏の葉の紅葉の色に似ていることによります。鳥栖駅や博多駅の立ち食い・カシワうどん、おいしいですよネェ!

北海道から九州までの温帯から暖帯にかけて、痩せた乾燥地でも生育することから北海道では防風林とします。「東京柏葉会」の名前を冠した同窓会に、岩手県立盛岡農業高等学校同窓会もあります。間違ってあちらの同窓会に顔を出さないように。また、もし岩手の方いらっしゃいましたら、会費さえ納入頂けれれば、どうぞ・・・・

 

さて、さて、只今から本論に入ります。分かっているようでわからない、多くの皆様から疑問点として聞かれることを「8件」まとめてみました。

 

1. 「柏の木」は雌雄同株だが、木本植物には雌雄異株が多い。キウイフルーツ、クロガネモチ、アオキ、イチョウ、キンモクセイ、ゲッケイジュ、サンショウ、ジンチョウゲ、ソテツ、etc.

従って、キウイフルーツ 雄木1本に「妾」付き植栽で、多収穫できるということになります。

 

雌雄同株でも結実しないものに  ウメ があります。

自家不和合性の故です。庭に1本のウメしかないのに結実するのは、ご近所のウメと浮気しているから。右隣のウメの木か、それとも左隣かはDNAを調べればよい。

 

DNA = デオキシリボ核酸(英 deoxyribonucleic acid)とは

 解かりやすく言えば「D 誰と、N 寝たか、A 明らかなり」ということなんです。

 

えっ!何? 「隣のオジサンに、俺、似てるかも?」それは、困ります。

要するに四角い庭に1本の木を植えないことなんです。

その結果は「困」ことになるんです。

 

 江戸時代、徳川御三家は「ウメ」の木を大切にしてきました。茨城県・水戸海楽園の観梅は皆様ご存知の通り、一方で紀州和歌山県の「南高梅」、これはまた美味い。同じウメを水戸は[観る]、紀州は「梅干漬け」、一体この差はなんなのでしょうか?

 水戸は関東平野の一角で平野に恵まれ米など食糧に恵まれました、他方、和歌山は熊野の山岳が熊野灘に直結、平野に恵まれなかった、自ずと、「梅干漬け」と、「観梅」の地域差が生まれたのです。

 因みに、私が今、住む茨城「水戸藩」の教え

「それ、水戸藩士たるもの、庭に梅の木2本植えるべし、その花、心慰め、その実その身を引き締むるなり」と、誠に理に叶った教訓を説いております。

 

 

. 「この木、なんの木、気になる木」 日立のテレビのコマーシャルを撮影なさった同窓生、本席にいらっしゃいますよネェ? ナンジャモンジャノキ = ヒトツバタゴ (雌雄異株)モクセイ科の落葉高木です。対馬市の「市の木」に指定されています。また、身近には、有楽町界隈の一部の街路樹として、植えられております。

 

 

. 16回生の 松本和子さん から 「ユズが葉っぱ、ばかり大きく成長して、果実が着いた試しなし」との質問。俗に「モモ、クリ3年、カキ8年、ユズの大馬鹿野郎18年」といいます。まことにユズに対して失礼なこと、決して、松本さん宅の「ユズ」が大馬鹿ではありません。ご安心ください。

これはN(チッソ)=葉肥、P(リンサン)=実肥、K(カリ)=根肥という、肥料の三要素の吸収差異によります。水分が多い限り、ひたすら水に最も溶けやすい、葉肥N肥料をのみ吸収し栄養成長を続ける、為に生殖成長である、花を咲かせ、果実を着けるという行為にいたらない、ということです。しかも、「ユズ」は常緑樹です、寒い冬でも水を吸い上げていますから、なおさらのことです。人も、我が身が年取ってきた、だから子孫を作ろうとする働きと、何らかわるものではありません。

 

 

. 土壌改良材として腐葉土を混入します。これは土壌中に多くの空隙を作ることを目的とします。一体、どの程度の 個層:気層 の比率なんでしょう。

 個層:気層  = 38:62 程度をもって、植物生育の理想である,この数値を忘れないで下さい。

4分6分と言わないところが、いかにも今日の講演の成果、ですネェ。

 虫食いにあった純毛のセーターの毛糸を、2〜3a に切り刻んで、土に混ぜると、空隙を作ることになり、立派な腐葉土の代価品になります。赤い毛糸を混ぜても、決して葉っぱは赤くなりません、お試しあれ!

 

 

. 集合住宅にお住まいの方の場合、植木鉢等の容器栽培園芸が主体となりますネェ。植木鉢は、適度の大きさを選ぶこと、が大事です。

私の恩師、花の学会では知る人ぞ知る、岡山大学の安田勲 教授に、よく言われたことでした。

「世に、バカの大鉢といって、素人程、大きめの鉢を選びたがる」と。

「鉢緩め」といって、一回り大きめの鉢に植え替える場合がありますが、一回り大きめとはどの程度を指すのか、1.5号(4.5a)程度大きめの鉢を選択すること。即ち、親指先2本分だけの大きさの鉢を選ぶ、ということです。親指2本で鉢周りを押さえて植え替え・安定させるということです。植物の根も命、人の指先も命、命と命の触れ合いなんです。因みに、鉢の大きさを表す「号数」は、鉢の直径を尺貫法、すなわち「寸」で、表しております。植物の根は外へ外へと、四方八方に拡がる性質があります。危険・リスクの分散を図ろうとする、己を守る、自然の法則なんです。だから、大きすぎる鉢は禁物ということなんですネェ。

 

 また、日本国内では白色の植木鉢、プランター等が多くみられますよネェ。あれは避けて頂きたい、太陽反射光が葉の裏を照らして、植物を痛めてしまうからです。金隠し等の便器でもあるまいし白は駄目です、黒、褐色、ダークグリーンなどの暗色系のモノを選んで下さい。米欧あるいは豪州等の園芸先進国で、例外を除いて白色容器を使っている場面を見たことがありません。それだけ、まだまだ、園芸後進国に甘んじている、我が日本なんです。見た眼にも、白は明度20°で目立ってしまう、緑色の葉や赤色花など観賞対象の植物は明度  14° で隠れてしまいます。

 

5回生の 西村 恵美子 さんから、ジャスミンの花後の手入れが知りたい旨、伝言がありました。さて、一般的に栽培されているジャスミンには2種類あります。

「ハゴロモジャスミン」

 学名は「Jasminum polyanthum(ジャスミナムポリアンタナム)」。日本名では「シロモッコウ」と言います。原産地は中国雲南省。モクセイ科に属します。金木犀等も同種類で、同じように香りが良い花ですよね。

 花が咲き終わったら、植え替えと摘芯をする。伸びすぎた枝をきれいにそろえる。蔓が結構のびるので、短めに切っても大丈夫。またぐんぐんと生えてくる。もしそれほど蔓が伸びていないようでしたら、様子を見て少し整えます。秋にかけて、またぐんぐん伸びてくるようでしたら、必要な枝を残し、他は切りながら調整します。

 9月上旬までに行わないと、翌年つぼみがつかなくなります。9月以降に出てきた新芽は、蕾がつくので、摘まないように。新芽を切って摘芯して、脇芽を出させることを繰り返すと、来年花がさらに多くつきます。

ジャスミンや 一片花を 茶に浮かべ

どうぞ、お楽しみください。

 

「 カロライナジャスミン」

 (学名: Gelsemium sempervirens)は、マチン科。

北米南部の原産。ジャスミンという名前は香りからきているが、お茶などに使う「ジャスミン」とは全く違う植物であるどころか、毒を持っているために、名前につられてお茶にして中毒を起こしてしまった・・・という事件が過去に何度かあります。気をつけて下さい。花色は黄色です。

 

 

6.庭をお持ちの方もたくさんいらっしゃることでしょう、芝生の庭に憧れて「芝生」にチャレンジしてみたものの、悪戦苦闘、雑草との戦いが始まります。

 高温多湿のモンスーン地帯に位置する我が国は、あらゆる植物の種子が雑草として存在します。可耕地1u当り、80万粒の雑草の種が含まれているという、これが戦い・苦痛の原因です。我が国の農業、園芸が「雑草との戦い」と言われる所以でもあります。また、雑草の多い故に、除草には経費がかかる、だから日本のゴルフ、グリーンフィーが高額になってしまう。スコットランドという、雑草の少ない地方で生まれたスポーツであること、ご理解下さい。

    芝公園  わしらの時代は  芋畑   そんな世代もありますよネェ!

 

 次回のオリンピックのために、壊してしまった国立競技場の芝生の管理をやったことがあります。毎春、芝生にかける目土は全て、大きな鉄板に乗せて、焼き土して雑草のタネを殺して使用していたことを、思い出します。

 

 

7.さて、さて、「園芸」とは、

 花卉園芸、蔬菜園芸、果樹園芸そして、園芸利用を総称したものなんです。花、野菜、果物作りを楽しんで欲しい。そして、野菜を加工して漬物を漬けて欲しい、自家採り果物でジャム、ジュースを楽しんで頂きたい。そんなスローライフな園芸生活を、かの著名な米国の絵本作家ターシャ・テューダー婆さんが語りかけています。3〜4年前、93歳で亡くなるまでスローライフな園芸を楽しんでおられました。先般、銀座松屋で、ターシャ・テューダー展をやっておりました、ご覧になった方もたくさんいらっしゃることでしょう。

 

 15回生の 永石 浩 さん からご質問頂きました。「小さなスペースで収穫できる食用美的園芸は? 最近はTVでも、よく園芸番組を見かける。」とのこと、

      

 「ポタジェ」園芸という方法をお勧めします。カトリックの坊さんたちが教会敷地で、自給自足する、菜園のあり方です。古いスペイン映画で「汚れなき悪戯」という映画をご覧になった方も多いと思います。

私は、小学校6年生の折に、当会副会長の「今村勝義君」と、この映画を佐世保玉屋デパート付近の映画館で見ました。「今村君。覚えていますよネェ。」 身寄りのない幼少のマルセリーノ少年を、12人の坊さん達が農耕・園芸作業しながら、育てるという、映画でした。

神様のおわす神聖なる敷地で野菜、果樹を栽培する、神聖なる教会敷地、常に美しく整理整頓して耕作する、ということなんですネェ。例えば、菜園の縁どりにはニラを植え、常に収穫を兼ねて、刈り込んだり、という園芸スタイルなんです。また、玄関先に南京袋に培養土を詰めて、さり気なく置き、サツマイモ、ジャガイモを栽培するのもいいものです。こうしたお洒落な菜園・園芸を「ポタジェ」といいます。

菜園で 季節を喰らう 旬野菜  自家製野菜をお楽しみ下さい。

 

8. フランス、パリ市内で著名なヴェルサイユ宮殿の大庭園の裏手の方に面積 100余f の、もぎ取り農園「ギャリー農園」があります。

かつて、私が師事しておりました、船井幸雄氏と同行して、この農園を訪ねたことがあります。入口に大型の花木店舗があって、そこで一輪車やリヤカーを借りて、農園内を歩き、ジャガイモ、ニンジン、キャベツ、レタス、イチゴ等を収穫して入口に戻り花を買い、料金精算して帰る。人より少しでも多く収穫しようと、農園内を焦って走り回るような人を見かけることはありませんでした。

さすがに、食料自給率 209% の世界に冠たる農業大国「フランス」です、それに比べて、私たちの日本は

 

 父無職 子供偏食 母過食!   

 結果として   昔、乙女、今、太め  どこか可笑しい。

 

食料自給率わずかに30余%の悲しい日本の数字、地球規模での人口の爆発的増加のなか、一歩間違えば、日本は北朝鮮と同じ運命を辿ることになってしまうということです。

「イヤー、参った、フランスに負けたァ!」と日本男児 宮内伶、ショックは大きかったです。

 安定した食料自給率あってこその、フランスの文化なんですネェ。

フランス・パリ発信のファッション、文化は、こうした地に足付いた安定した生活の上に成り立っているのかな、と思いを致した次第でした。

「宮内くん、日本にもギャリー農園を作らなくっちゃネ」と、船井先生と語り合ったことでした。

 極東の片隅にあって日本は、欧州の農業大国フランス同様、その先進的な農業・園芸技術をもって、アジアの農業・園芸大国になれる素養・実力を持ち合わせています。まことにスローライフな農業、園芸ではありますが、農業、園芸を生活基盤の中に取り入れ、エンゲル係数ならぬエンゲイ係数を高からしめてこそ、本当の意味で、安定した幸せな、毎日が過ごせる国・日本になると、思います。

 

 「園芸」というテーマにひかれました、と18回生の 橋口 健治朗さんの伝言を頂いております。

 

 15回生の 田端 昭義 さん、小林 八寿江 さん、そして17回生の 青井 弘子さんには「園芸・ガーデニング」を楽しみにしておられるとの伝言を頂きました。

 

 31回生の 原田 真樹子 さんは、以前から家庭で草花を育てておられ、園芸に関する新しい情報を得たいとの伝言でした。

 

 

 3Kの一つとみられがちな農業・園芸就業者数は減る一方の、我が国の状況です。全国を経営コンサルタントとして歩き回っていますので、そこらの事情が手に取るように解かります、農産物の産直売り場への出荷者は、そのほとんどが兼業農家です。いわば、家庭菜園にほんの少しばかり毛の生えた程度の経営規模、「セミプロ」農業・園芸家がほとんどなんです。

園芸好きの皆様方も含めて、セミプロ農業・園芸家が日本を蘇らせるものと、固く信じております。

曲がったキウリや、ナスでも構わないと思うんです。朝穫りであれば味はこれに越したことはない。スーパーで販売されている、真っすぐのキウリやナスに飼いならされてはいけません。

 

ともすれば、規格一点張りの杓子定規に従おうとする、一見、真面目そうなお堅い頭脳構造の私たちです。

街中の街路樹だって同じです。きっちりと8b間隔で植えてなければ承知しない、台風で一本の大木街路樹が倒れようものなら、鎌倉・鶴ヶ丘八幡宮のイチョウでもあるまいに、血税・大金を支払ってその木を起こして立て直そうとする。ところが、ガーデニング先進国、ブリティッシュの感覚は違う、倒れた大木の傍らにアトランダムに小苗が植えてあり、倒れた大木は伐採し、次世代の小苗を育てる、という発想なんです。とりわけ、この発想・思想・考えを、かつて英領であったイラン・テヘランの街路樹を見たときに、痛切に感じた次第でした。

そんな場合大木は伐採して、傍に植えた小苗を育てればいい、何もきっちりと等間隔でなくても、樹高がバラバラで、アトランダムに植え込まれていても構わない、気取らず、もっと、柔らかな頭でいたい、と思うんです

この発想・感覚は古くから日本にもありました。宮崎県の高千穂峡を訪ねると、吊り橋を多く見かけました。吊り橋はスギ、ヒノキなどの大木に支えられていました。そして、その大木のすぐ傍に必ず中・小の苗が植えてありました。先人は、知恵の塊なんですネェ。


欧米先進国を追いかけて、ひたすら経済成長路線を突っ走ってきた明治以降の私たちでした。先人の生きてきた知恵を、植物を通して、まことにスローライフな「園芸」を通して考えなければと、思っております。 案内書に記しました長崎市東山手での、3〜6歳の頃の金髪のガールフレンド宅の美しい花壇、同時進行した新聞紙混じりの下肥のかかった小汚い野菜畑の食糧生産、この二つの同時並行した事象が、豊かな時代になった今、改めて多くを考えさせてくれます。

どうぞ、「花も実もある」スローライフだが、素晴らしいガーデニング・ライフをお楽しみ下さい。

 

「園芸を60分で語れ」と言ったって、それは無理難題、話始めれば一日中でも話は付きません。全国各地で園芸講演依頼されておりますが、今回を第一回という程度に捉えて頂き、また、どこかでお会いして園芸を語り合いましょう。

 

以上、70歳の年齢に免じて、お許しください。

ご無礼の点が、なかったと、思います。

 ご清聴、ありがとうございました。